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The Birthday『サンバースト』全11曲感想

The Birthday サンバースト

 

去る2021年7月28日、The Birthdayの11枚目となるアルバム『サンバースト』がリリースされた。
そして明後日9月1日には彼らの約1年ぶりとなるツアー『SUNBURST TOUR 2021』が初日を迎える。迎える予定だ、このエントリーを書いている現時点(8月29日深夜)では。アルバムがリリースされて、通勤電車の中で聴きながらある曲では衝撃を受け、ある曲ではちょっぴりセンチメンタルな気分になったりした。そして、アルバムを聴き終えて思ったことは「なんだ、The Birthdayは変わってないじゃん」という安心感でもあった。チバユウスケは相変わらす愛を歌っていた。良かったです、安心しました。

 

さて、気付けば2021年の夏も終わろうとしている。
相変わらずコロナコロナで殺伐とした日々を送り、なんだかあらゆることに無気力な日々を過ごすわたしは、このブログの更新をサボりまくっていた。なんと前回のエントリーは2020年末にリリースされたミスチルのアルバム全曲感想でした。こんなことじゃいけないと思う反面、そんな無理して書くものでもないだろうという気持ちもある。だからこそ、ある時期から自分の中での恒例としていた“全収録曲の感想エントリー”も発売から1ヶ月経ってようやく重い腰を上げてPCに向かって書いている、といった感じだ。それでも後々なにかのきっかけでブログを読み返したときに『サンバースト』の全曲感想エントリーが抜けていたら激しく後悔しそうなので、こんなド深夜にPCに向かうことにしました。
アルバムリリースに向けてプロモーションを兼ねた様々な雑誌が発売され、それらの多くを購入し手元に置いてはいるのだが、ほとんどがいわゆる積ん読状態である。『DONUT』の表紙最高ですね(開封していない)。そんな状態で、感想エントリーを書くのはオタクの風上にも置けない行為かもしれないが「なんとしてもツアーの初日までには音源から受けた感情を吐き出しておきたい」という気持ちのほうが勝ったので、ひとまず書くことにした。後々、彼らのインタビューを読んだら「あちゃーわたしの解釈まったくズレとるじゃない!!!」と赤っ恥をかくかもしれないので予防線を張っておきます。

 

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01.12月2日
1曲目から目が覚めるような激重ギターの爆音イントロ。
第一音を聴いた瞬間に「うわぁぁぁThe Birthdayの音楽だ!!!!」と実感した。そうなのだ、このギャンギャンしたギターこそわたしにとってのThe Birthday。出だしから嬉しくなってしまう。
こんなに物々しい雰囲気漂うサウンドに〈街はどうやら平和だ〉なんて歌われても平和感皆無だ。でもその能天気さがなんだかとっても良いなぁと思う。楽曲の終盤、終わったと思いきやブレイクを挟んでの〈ラララララ〉と歌うチバユウスケ。良いなぁ、すごくチバユウスケっぽいなぁ。初っ端から見事にガツンとやられた。生活から遠のいていたロックンロールをいつでも思い出させてくれるバンドである。

 

02.息もできない
1曲目とはガラッと雰囲気を変えた優しいギターのイントロ、そこから続くAメロのベースラインがとても好きでした。ベースに合わせて歌詞がセリフ調に乗ってくるところもとても好き。「きれいな曲だなぁ」なんて油断していたらサビの歌詞で心臓止まるかと思った。

お前の唇 何かを言おうとしてた 黙って塞いだ 息もできないくらい  

あまりにもダイレクトな歌詞に、いい大人が通勤電車の中でドギマギしてしまった。ロマンチストver.のチバユウスケが炸裂していて事前情報がない無防備な心臓には衝撃が大きすぎる。これ、ライブで聴いたらどうなってしまうのだろう。めちゃくちゃドキドキしてしまう自信がある。キモいオタクっぷりが発揮されてしまいそう。考えただけで変な汗が出ちゃうよ……。
静かなアウトロがまるで映画のエンドロールのよう。楽曲の世界に流れるタイム感みたいなものがあるとしたら、『息もできない』という作品世界に流れる時間はあっという間に過ぎていくのだろうと思う。楽曲全体に漂う切なさや焦燥感みたいなものを強く感じた。

 

03.月光

お前の想像力が現実をひっくり返すんだ

『サンバース』の核がここにありました。
『月光』に関してはMVが先行配信されてたりラジオで音源が先行公開されてたりしていたらしい。「らしい」としたのは、わたしがそれらの波に全く乗れないままアルバムリリース当日を迎えてしまったからだ。
そのため、アルバムを通して聴くまでリード曲的なポジションである本作を耳にすることもなかった。だけど、初めてこの曲を聴き、先述の一節を耳にして「うわぁ、このタイミングでこんなセリフを入れてくるチバユウスケかっけぇ」と一発でヤられてしまった。もちろん印象的なセリフ以外にも、歌詞に関して興味深い部分はたくさんある。同じフレーズを2回続けていたり、〈月を抱いて 月夜抱いて〉と同じような響きでちょっとだけ意味合いの異なるフレーズを続けていたり……。
あと、ギャンギャン鳴る系のギターが大好きな身としては〈お前の想像力が現実をひっくり返すんだ〉後の高音ギターが最高に心地よいです。

 

04.ラドロックのキャデラックさ
歌い出しからタイトルでもある〈ラドロックのキャデラックさ〉の大合唱。楽しいムードがビンビンに伝わってくる。
「ライブでも会場みんなで歌うんだろうなぁ……」と考えた数秒後に、それが叶わない世界に生きているのだと気付いて悲しくなった。アルバムを聴きながら無意識にライブで演る時を想像してしまうのがクセのようになっている。きっとこの部分はみんなでシンガロングだろうなぁ……とか、きっとチバが会場を煽ってくるのだろうな……なんて思っても、しばらくそういった光景を目にすることはできない。でも、だからこそ、音源で合唱パートを入れてくれたのかもしれない。たくさんの声が重なる音を忘れないように。
ところでイントロのドラムを聴くと、一瞬だけエアロスミスの『jaded』が脳裏にチラつくのはわたしだけでしょうか……。(この文章を書きながら改めて『jajed』を聴いて確認してみたらそんなに似てなかったです)

 

05.レボルバー
疾走感のある一曲。Bメロにある〈言葉と音に縛られて生きるのはもうやめようって思った さっきちょっとさ〉という部分に小さな衝撃を受けた。音楽を生業としている人間からこんな歌詞が生まれるのか。いや、四六時中音楽のことを考えているからこその発想なのかもしれないけれど。ところでチバユウスケって動物やら植物の名前を頻繁に歌詞に紛れ込ませていて、そんなパーソナリティが「なんだかすごくチャーミングだわ」と思っている。こんなに動物やら植物やらの固有名詞が登場する作品を連発する作詞家も珍しいのではなかろうか……。

 

06.アンチェイン
楽曲全体から凄まじい昭和っぽさを感じる作品。なんでだろう、ドラムのリズムなのかなぁ……。昔懐かしの歌謡曲っぽさみたいな。コミカルでキャッチーですごく耳馴染みがいいなぁと思った。いかにもイントロですよ!といった雰囲気の始まりもとても良い。とはいえ歌詞は凄まじい内容を歌っているのだが。最後のドラムがカッコいい。

 

07.晴れた午後
もう本当になんで『晴れた午後』ってタイトルの楽曲がこんな悲壮感漂う歌い出しになるんだよ、と油断していたら度肝抜かれた。あっという間にテンポアップしてからのスピード感がエグい。中でも〈弾丸ナイト その先にあった 真実だけが 俺にとっては〉という部分の超絶高音ギターがめちゃくちゃにカッコいい。これ、ライブで聴いたらテンション爆上がり間違いないですね。あと〈空っぽの愛が 俺にとっては 全てだったんだ それでも俺は〉が悲しすぎてダメです。

 

08.スイセン
スローなテンポが心地よく優しいメロディなのに、どこか全体的に退廃的なムードに溢れている、そんな寂しさも感じる作品。そのまま丸ごと映画(わたしの中ではロードムービーのイメージ)のワンシーンになりそうな歌詞が印象的。その映画の結末は、たぶん絶対にハッピーエンドじゃないだろう。
今回のエントリーを書くにあたり改めて歌詞を眺めてて気付いたことがある。『サンバースト』というアルバムは、それぞれの楽曲に出てくるワードが過剰なくらいにカタカナ表記になっていた。敢えて意味が明白になる漢字表記を避けているような、読み手の解釈に幅を持たせるような、そんな思惑を感じた。もしかしたらいちいち漢字を確認せず、最初に書き出した詞をそのままfixとしたのかなぁとも思ったけれど、わざわざ歌詞を本というパッケージで発表するほどのチバユウスケがそんな安易な着地をしているとも思えないので、おそらく意図的なのだろう。〈マフユ〉とか〈ハカイ〉とか、カタカナ表記にすることで言葉がもともと持ってる温度感が限りなく無になる気がする。不思議だ。

 

09.ショートカットのあの娘
チバユウスケが歌う〈あの娘〉はなんでこんなにも魅力的なのか。わずか2分半の非常に短い楽曲。ベースがめちゃくちゃカッコいいです。あと歌い出し直前のドラムがエグいリズム叩いてる。カッケー!!!

 

10.ギムレット
ポップなメロディなのに何故か泣ける曲というのが世の中にはありまして。この『ギムレット』がまさしくそれにあたる。わたしはストレートに愛を歌うチバユウスケにめっぽう弱いのである。コロナ禍の無味乾燥な日々でも、宇宙規模で愛を歌ってくれるんだもんなぁ……。常々、わたしはチバユウスケの未来を諦めない姿勢みたいなものに強い感銘を受けていて、それは決して楽天的なものでなく、絶望とか苦しみとか悲しみとかそういった大きなマイナスを内包した上でのポジティブだと思っている。だからこそ彼が歌う愛とか希望には説得力があるよなぁとも思っている。この『ギムレット』という楽曲には、そういったチバの姿勢みたいなものが色濃く反映されている。だから彼はこんなにも〈小さな愛〉について繰り返し繰り返し歌っているのだと思う。この作品で歌われている〈でくのぼう〉や〈お前〉は間違いなくわたしだ。宇宙規模で見たらせせこましいわたしだ。そんなわたしのまわりにもたくさんの小さな愛があると、チバは歌ってくれるのだ。

人間は結局この星の的になっちゃったけどさ
人間を創ったのは やっぱりこの星なんだって思いたいよね 

この〈思いたいよね〉に、わたしはチバユウスケが抱く未来への希望を見た気がした。
ライブで聴いたらぜったい泣いちゃうよなぁ……。

 

11.バタフライ
夏らしいワードが散りばめられた『サンバースト』結びの1曲。

すごく幸せな二人を歌っているような気もするし、これはもしや破滅に向かっているのでは、と思わなくもない。でも聴いてるとすごく穏やかな気持ちになる不思議な安心感があるメロディ。生ぬるい風に吹かれているような気分になる。歌詞の中に出てくるバナナジュースもたぶん甘ったるくてぬるいと思う。終始平和な歌詞が並んでいるのに、最後の最後で〈ナイフ〉なんて穏やかではないワードが飛びててきて、それはそれで愛の恐ろしさみたいなものを感じる。

 

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ということで全11曲の感想である。個人的には『息もできない』と『ギムレット』が特にお気に入りです。


久しぶりにThe Birthdayの楽曲を立て続けに聴いたら「これぞバンドじゃん!!!!」とシンプルに感動した。こんなにも個々の楽器の音が耳に飛び込んでくるような音楽を聴いたのは久しぶりな気がする。いじくり回してない音、といった素直さを感じるとともに「やっぱりわたし“バンドです”って感じの音楽好きだなぁ」と思うなどしました。
ロックバンドの音楽をお求めの方、ぜひに。

 

 

▼前作『VIVIAN KILLERS』の感想はこちら
The Birthday『VIVIAN KILLERS』全12曲感想

 

▼今までのThe Birthday関連の記事はこちら
The Birthday『GLITTER SMOKING FLOWERS TOUR 2020』東京公演感想

The Birthday『VIVIAN KILLERS TOUR2019』横浜ベイホール公演感想

The Birthday TOUR 19 NIGHTS 2018 AUTUMN 中野サンプラザ公演感想

 

おわり。
ご覧いただき、ありがとうございました。

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