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『カナリヤ鳴く空』を観た夜のこと_「LIVE with YOU -TOKYO SKA JAM "8"」感想

LIVE with YOU -TOKYO SKA JAM "8"

喜びの度合いを表すことばは人それぞれだ。

シンプルに「うれしい」とする人もいれば、とても回りくどい表現やオーバーな言い回しを好む人もいるだろう。

ちなみに、わたしの場合は「発狂」ということばを使う傾向にある、と思う。調べたことはないけれどたぶんそうだ。自分の感情のキャパシティを超えた喜びを表現するとき「発狂」ということばをついつい使ってしまう。

さて、この場合の「発狂」は比喩である。何の前触れもなく突然ライブ会場でなりふり構わず叫び暴れたりしたのではなく、あくまで「発狂(するほどの喜びを感じた)」的な意味合いを含ませている。

ところが先日のライブで、文字通り「発狂」する経験をした。それこそ当時は発狂まっただ中であったため、そんなことは1ミリも考えていなかったのだが、後日改めて当時を振り返り"あの時のわたしはもしかしたら「発狂」と呼べる状態にあったのではないか"と思い至った。

 

当時とはいつか。

それは去る11月7日、東京スカパラダイスオーケストラfeat.チバユウスケによる『カナリヤ鳴く空』を初めて目の当たりにした現場のことである。

『現場』とはいかにもオタク感溢れるワードチョイスだが、なんというか、あの日のあの場所はとても「現場感」が強かったのだ。日が経つにつれ、貴重な機会だったとしみじみ思う。

 

という訳で、今日はあの夜のことを書きます。

 

スカパラのライブにチバがゲスト出演すると知ったのは9月のことだっただろうか。その頃のわたしは仕事で新たな案件を任されるようになり、先々のスケジュールがまったく読めない状況にあった。とはいえ、そこはオタクである。推しのライブが決まったら四の五の言わずにチケットを押さえる、チケットさえ入手してしまえば何がなんでもどうにかして行こうとするのがオタク……というかわたしなのだ。そんなじぶんの特性をじゅうぶんに理解しているので、サクッとエントリー。それに伴うアレコレは当たってから考えればいいやくらいに思っていた。

 

10月2日チケット当落日。こちらの心配をよそにエントリー1発目でチケットがご用意された。競争率が高いだろうなぁーと勝手に予想していたので、まさかこんなにもスルッとチケットを確保できるだなんて……うれしい誤算だ。ただ、手放しに喜んでばかりもいられなかった。とにかく仕事が忙しくなっていたのだ。毎朝始業時間の30分以上前に出社し、終電ギリギリまで働くという『転職後じぶん史上MAX忙しい状態』に突入したのである(とはいえ通勤に2時間近く掛かる埼玉県民なので終電といえども23時前、一般的に言われているようなブラック的なことではない。始業時間も10時だし。あくまでじぶん史上での話です)。どんなに平日残業を繰り返しても休日出勤だけはしまいと強く誓っていた身にも関わらず、土曜出勤をしてしまうくらいめちゃくちゃハードモードな毎日。食事を摂るタイミングを逃す日々を繰り返し、体重が2kg減った。ヤッタネ(もう戻った。現実 is 無情)!!!Twitterを開く暇もなくなり、The Birthday関連の情報もろくに追えなくなってきていた。

そうなってくると、どうなるか。推しごとをするためにお仕事しているようなもんである。ところがお仕事が忙しくて推しごとに手が回らなくなるという本末転倒な状況に……。すべてがどうでもよくなる日もそう遠くはないぞ、との嫌な予感が芽生え始めた。

オタク活動においてこの予感は非常にまずい。わたしはあらゆる情報を追っておきたいタイプのオタクであり、それらが疎かになるとめちゃくちゃストレスを感じてしまう。そして、それが最高潮に達すると何もかもがどうでもよくなってしまうのだ。それはつまりオタク活動休止を意味する。人によっては「そんなの純粋な好きとはちょっと違うのでは?」と思う人もいるだろう。わたしだってそう思う。しかし、わたしの場合は、推しはもちろん、推しを応援しているじぶん自身にも楽しみを見出しているタイプなので、そこに綻びが出てくると、色々な部分で歪みが出てしまう。じぶんの中でハードルのようなものがあって、それを超えていないのに「○○を好き」という状態である自身を許せなくなってきてしまうのだ。とにかくそんな感じの毎日に、ライブへの想いも徐々に弱まりつつあった。

とはいえせっかくの機会である。チバユウスケ沼にずっぽりハマって以来何度も何度もYouTubeで繰り返し見続けてきたあの『カナリヤ鳴く空』をライブで聴けるかもしれないのだ。腐ってはいけないとモチベーションを保ち続けるために踏ん張った。ライブ当日、どうにか前日までに仕事の算段をつけ定時ダッシュを決めた。こんな時こそ真のオタク魂が試される。あんなに連日残業をしていたのに、この日に限っては見事に定時で切り上げたのだ。素晴らしい!

 

事前に調べた通りのルートで会場である新木場スタジオコースト(以下コースト)へと急いだ。最寄駅である新木場駅に着いた頃には開演時間の19時を少し過ぎていた。足早に会場へと向かう。ようやく到着し、ロッカーへと荷物を預け、場内へ。すでにスカパラによる演奏が行われていた。コーストといえば東京近郊でもメジャーなライブハウスである。あの外観のビルボード(でいいのか?)は憧れの存在だ。とはいえ、わたしはその日までコースト内部に足を踏み入れたことがなかった。過去にBUMPのライブがあり、当然のようにチケット運に恵まれなかったわたしは、諦めきれずにただコーストの外観を撮るためだけに当時の勤務地である埼玉県川越市からコーストへ行ったことがある。その日、会社を出発したのは18時過ぎだ。アホである。目に涙を浮かべながら『BUMP OF CHICKEN』と記された憧れのビルボードの写真を数枚撮り、数時間前までは多くのファンに囲まれていただろうツアトラの写真を何枚も撮影して帰路に着いたあの夜をわたしはきっと忘れないだろう。

 

そんな訳でコースト内部に関する知識が明らかに足りていなかった。まだ見ぬ未開の地へ足を踏み入れたとき、人間という生き物はとにかく奥へ奥へと進んでしまうのだ。ステージ上手側の入り口から入った時には、すでに前方フロアはお客さんで満杯となっており、後方からの視界もかなり厳しい。こんなのではダメだ!とただただ下手側に進んでいった結果、ついに壁へと突き当たってしまった。マジかよ…… 最悪のポジショニングである。客がギッシリでステージが全く見えない。良かれと思って前方へ進むも状況は悪くなるばかり。前には男女2人組、しかもわたしの真ん前には男性の頭が…… 完全にステージへの視界が遮られていた。チバはまだ登場していないのだろうか。もしチバが登場してもここからだと何も見えないのではないか。様々な不安が次々と脳内を通り過ぎていった。

スカパラによる演奏が数曲あり、軽いMC。良かった、どうやらまだゲストは一人も登場していないようだ。ひとまず最悪のポジションではあるけれど、ドサクサに紛れてどこかのタイミングで好ポジションを確保するしかなさそうだ。

 

そうして今後の計画をぼんやり企てているうちに一人目のゲストアーティストであるコムアイが登場した。

ステージセンターの一段高い部分に突然の登場。いかにもゲストでーす!!!といった感じだ。まさかチバもあんな風に登場するのだろうか?あまりにも似合わなすぎる演出でちょっと笑ってしまいそうだ。

初めてライブで観たコムアイはとてもかわいかった。淡いムラサキ色のボリューミーなワンピースも、ふわふわのデカい帽子もとても似合っていた。とは言えポジショニング最悪のわたしである。人々の頭の隙間からときどき見えるコムアイしか確認できない。スカパラメンバーに至ってはほぼ誰も確認できない。こんなにもステージが見えないライブなんて初めてなのでは?というほどにマジで見通しが最悪だった。コムアイが歌う『美しく燃える森』に会場中が盛り上がっていても、わたしの思考の4割くらいは「このままではチバが見えない、どうしよう」という恐怖感に占められていた。まさしく上の空状態。ライブ中はターゲットただ一人にロックオン状態で楽しみたいタイプなので「音楽だけ聴こえていれば視界なんて(フッ)」みたいなライブ上級者の楽しみ方はまだまだできない。やっぱり大好きなチバユウスケの一挙手一投足をこの目で目撃しておきたいのだ。

 

その後、二人目のゲストアーティスト渋谷龍太が登場した。わたしは何とかステージが見えるポイントを発見し、渋谷がそのゾーンに移動したときのみ彼を視界に捉えることができた。ステージの全体像が未だに掴めていなかったので(なにしろ何も見えていなかった)、そのゾーンがステージのどこら辺なのかも良く分からない。何となくセンターよりちょっとだけ下手側のような気がする。渋谷はどちらかといえばステージ上をゆるやかに移動するタイプのアーティストなので、このゾーンにも1曲のうちに5回くらいは姿を見せてくれた。果たしてチバはどうだっただろうか……。The Birthdayのときはスタンドマイクだから動き回ることはあまりないけれど、ハンドマイクで歌うときはどうしていたっけ。盛り上がる会場をよそに、やはり思考の何割かは後に登場するチバへの視界確保のことで必死に過去の記憶を掘り起こしていた。

わたしには、何だかんだで渋谷龍太のライブを数回観てきた経験がある。いずれもThe Birthdayが出演したフェスでのことだ。これは本当に失礼なのだけど、彼がフロントマンを務めるSUPER BEAVERのライブを観ると「このアツさが若者の心を掴んでいるんだな」などと独特のMCに関心を向けがちであった。あと渋谷の衣装の柄シャツが毎回いい感じに派手で、そして彼は痩身なので痩身バンドマン好きとしては「(ビジュアル面での)シルエット最高やんけ。あと柄シャツいいな欲しいな」などと考えることが多かった。ところがこの日、スカパラの演奏で歌う渋谷を観て、改めて彼の歌唱力に驚いた。シンプルに「歌うまいなー」と感動したのだ。スカパラのコラボ曲の中でも人気が高いであろう『めくれたオレンジ』を見事に歌い上げていた。すごい。

その後も次々にゲストが登場する。高橋優は歌はもちろんMCでも会場を大いに沸かせていた。彼のライブも過去にフェスで2回ほど観たことがある。そのたびに「太陽みたいに歌う人だな」と思う。とにかく纏う空気がポジティブなのだ。マンガのように効果音をつけるなら『パーーン!』といった感じか。ファンの方には怒られるかもしれないが、ナオト・インティライミが放つ暴力的なまでの太陽属性をいい感じに薄めると高橋優になると思う。高橋優の太陽属性は我々にとってちょうど良い。ナオト・インティライミの太陽属性は時に暴力なので……。

 

次にステージに現れたのは04 Limited SazabysのGENである。ここら辺で気づいた、これはチバユウスケは大トリだな、と。そういえば二人目の渋谷龍太以降は会場下手に設置されたサブステージ的な場所からゲストが登場し、メインステージへと移動してきている。サブステージ上でピンスポットに照らされる彼らの後ろにはデカデカと名前が表示され、けっこう派手な演出だ。そしてわたしからとても近い。もしチバもここから登場するなら相当の近さだ。ステージへの視界が死んでいるわたしにとっては一縷の望みである。
さてGENの歌声を初めて聴いたわたしはその高音加減に驚いた。なるほど彼はこんな歌声をしていたのか!想像よりもずっと可愛らしい歌声であった。何しろこの日までわたしは『04 Limited Sazabys』を「ゼロフォーリミッテッド サザビーズ」と呼んでいたほどである(正しくはフォーリミテッド サザビーズ)。無知がひどい。GENの歌う『サファイアの星』はいい感じにchara声っぽくてとても良かった。MCでチバユウスケに絡めたネタを話してくれたのもとても良かった。3割りくらいの客しか反応していなかったけどわたしは声を出して笑ったぞ。

 

続いて登場したのはキュウソネコカミのヤマサキセイヤである。わたしはヤマサキセイヤが結構好きだ。ワンマンに行く勇気はないが、フェスでは何度か観ていて、そのたびに何かいいなぁと思っている。今年の夏にロッキンで観たときも何かいいなぁと思った。新曲(タイトル不明)には強く胸を打たれた。そういえば彼もなかなかの痩身バンドマンだ。そんなところも何かいい。そんなヤマサキセイヤは、この日、めちゃくちゃ緊張していた。それはライブでの彼を数回しか観たことがないわたしにも分かるほどだった。彼自身も気持ちが高ぶっている旨を語っていたが、その語り口からも緊張の度合いが伝わってくるほどに見事に緊張していた。

ところで、キュウソのライブといったら筋斗雲である。しかしわたしが今まで観てきた彼らのライブではそれが登場することはなかった。そもそもわたしが観た彼らのライブはいずれもフェスであった。そしてそのどれもが観客のダイブ禁止をルールとしていた。そうなると当然演者のダイブも禁止だ。なので、わたしは筋斗雲に乗るヤマサキセイヤを観た経験が一度もない。ところが、この日はMCの流れでその筋斗雲が登場した。どう考えても場違いであったし、そもそもキュウソネコカミをよく知らない人には何のこっちゃ分からない状況だったと思う。それでもわたしはあの筋斗雲を初めて生で見られたことに自分でも意外なほど感動していた。残念なことに、筋斗雲に乗っかるヤマサキセイヤを観ることはできなかったが、それはまた次の機会に。というかそろそろワンマンにも足を運んでみようか。どうやらキュウソは来年大がかりな対バンツアーを企画しているようなので、どこかでThe Birthdayと一発どうでしょうか?

 

そうしてあっという間に残すゲストアーティストはチバユウスケただ一人となった。

相変わらずわたしの視界はある特定のゾーンでしかステージを見ることができないままだ。どうか、チバがこのゾーンで歌ってくれますようにと願うばかりである。そしてどうかどうか『カナリヤ鳴く空』を歌ってくれますように。


次々と引っ切り無しに続いたゲストアーティストによるステージがひと段落して、高まりまくった会場の熱気をやや静めるようにスカパラが『ゴッドファーザー 愛のテーマ』の演奏を始めた。ここで勘づく人も多かっただろう。いや、チバユウスケのファンであれば誰もがピンと来たに違いない。しかし『カナリヤ鳴く空』を間もなく観られるかもしれない謎の緊張と、そんな貴重な場なのにチバユウスケの姿が拝めないかもしれない吐きそうな不安にぐるぐるしまくっていたわたしは、そんなニクい演出にもまーったくピンと来ず「スカパラってこんな曲もカバーしてたのかぁ」とノン気に構えていた。クソ過ぎる。『ゴッドファーザー 愛のテーマ』といえば、かつてチバユウスケが在籍していたバンドであるTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの登場SEだった。きっとミッシェル時代からチバの音楽活動をリアルに追っていた方々にとっては堪らなかったのではなかろうか。そして、何となくだけど、こういったときに“当時”を知る人間と知らない人間の違いが出るよなって思う。何となくだけど、やっぱりその体験をしている人間としていない人間では想定外の状況に対する瞬発力が違ってくる気がする。まぁ、わたしが単にポンコツなだけかもしれませんが……。
スカパラの演奏に合わせて真っ赤な照明に染まるステージ。

 

その時は突然やってきた。あまりにも突然だった。

音楽でも動画でも今まで何度も何度も耳にしたあのイントロが突然演奏されだしたのだ。一瞬で体中の温度が上昇した。血液が沸騰し、あっという間にテンションは振り切れる。あまりにも突然のことに、声にならない悲鳴を上げ、両手を突き上げて何度も飛び跳ねていた、と思う。もう記憶もあやふやなのだ。とにかく体験したことないような高揚感に包まれて、笑いながらひたすら「ヤバい」とか「マジか」とかを連発していた気がする。イントロに合わせてステージ下手から現れるチバユウスケ。残念ながらサブステージは活用されなかったがそんなことは最早どうでも良い。その姿を視界に捉えた瞬間、初めて大声で「チバー!」と叫んでしまった。我慢ができなかった。体中を駆け巡る喜びをとにかく体外に放出しなくては、きっと耐えられなかったのだと思う。The Birthdayのライブに足を運ぶたびに、ステージに向けて「チバ!」と声を上げる方々がいる。そして、そんな様子にちょっとだけギョッとしてしまうじぶんがいる。やっぱり当人に対して「チバ!」と声を掛けることはなかなかに勇気がいる行動であるし、時と場合によってはライブの空気感をぶち壊しかねない。だから、ライブでステージに向けられる「チバ!」という呼びかけを耳にするたび、軽い嫌悪感(すみません石を投げないでください)と「わたしには無理だな」という気持ちを抱いていた。 だけど、この日だけは無意識のうちに「チバー!」と声に出していた。あまりにも異常なテンションだったのだろう。ライブ中ずーっとわたしの視界を遮っていた男性が後ろを振り返りわたしの顔面を確認してきた。申し訳ない!と心のなかで謝りつつも「だけどこの曲だけは許してください……」と脳内土下座を繰り返し、やっぱり相変わらずわたしはピョンピョン飛び跳ね続けた。ちなみに、それら一連の出来事に紛れてちょっとだけ視界が開けたと記憶しているが定かではない。

『カナリヤ鳴く空』を歌うチバユウスケは、それはもうバチクソにカッコ良かった。マグロックで初めてThe Birthdayのライブを観たときも、あまりのカッコ良さに「ヤバい」を繰り返す『チバユウスケヤバいbot』に成り下がったわたしだが、この日は「ヤバい」すら発せず、ただただニヤニヤしながら踊り狂っていた。もちろん視線はチバにロックオン状態で。これはファンの欲目かもしれないが『カナリヤ鳴く空』が演奏された瞬間から場内のテンションが異様な興奮状態に陥ったように感じた。それぐらいブッチギリ状態だったのだ。ライブ後に当時の状況を「ラスボス降臨」と評しているツイートを何度か見掛けた。まさしくそのとおり、間違いなくあの日のチバユウスケはラスボスであり無双であった。

高音になると顔を上に向けてキーを探るように手を上下させるチバも、〈さらばいつか逢おう〉部分で歌詞に合わせて片手を挙げるチバも、〈敵蹴散らし〉で蹴りを入れる仕草を真似るチバも……そのどれもがYouTubeで何度も観てきたあのチバユウスケに重なった。憧れの映像を、いま、まさしく目の当たりにしているのだという実感が確かにあった。今まで数多くのライブに足を運んできたし、大好きな曲をライブで聴くという経験も何度もしてきたが、この日のあの感覚はそれらとは明らかに違っていた。それは、仕事が忙しくて趣味に没頭できないストレスがピークであったことだったり、ゲストが入れ替わるたびに「次はチバか?」と焦れに焦らされた末の登場だったことだったり、それまでステージがなかなかに見えづらい状況であったというフラストレーションが極限に達していたことだったり、さまざまな要因が重なったせいかもしれない。しかし、やっぱり最大の要因は「きっともう観られないのだろうな」と諦めていた大好きな曲をライブで観られた、という奇跡だったのだろう。いくらコラボレーションをしたといってもリリースは20年近く前のことだし、現在のチバユウスケThe Birthdayとしての活動にめちゃくちゃ精力的だ。その上、何だかんだと色々な活動も並行して進行している。とにかくめちゃくちゃ働いている。だからこそ、スカパラと同じステージに立つチャンスなんてきっとないだろうな、と諦めていた。諦めていたというより、そんな日は来るわけないと共演を願うことすらしていなかった気がする。ただただ、YouTubeの向こうで盛り上がる光景を羨望の眼差しで見続けることしかできなかった。だからこそ、その経験をじぶんがしているなんて……!!!!やっぱり異常な興奮状態に陥ってしまうのも仕方のないことなのだ(ここまでが件の振り返った男性に対しての長い言い訳です)。どれだけ踊り狂っていただろうか、あっという間ですごく長く感じた時間も終わりを迎えた。わたしの隣りに立っていた小柄な女性もどうやらチバユウスケのファンらしかった。演奏中は、わたしと同じように体を左右に揺らしながらノリにノッていた。言葉こそ交わさなかったが、わたしは勝手に心のなかで「同志よ……」とガッチリ握手した。あの奇跡の瞬間を目撃できたわたしと貴女は間違いなく幸運でしたね!!!!!

 

あぁ、本当にカッコ良かった。ただただカッコ良かった。『カナリヤ鳴く空』のあとに、再びスカパラとコラボした新曲を披露してくれたのだけど、そんなことはオマケにしか思えないくらい、あの夜は『カナリヤ鳴く空』に支配されていた。行ってよかった、本当に行ってよかった。

 

アンコールで再び登場したチバユウスケがハットを被っていて、それも相当にカッコ良かったこととか、そんな彼が他のアーティストと横一列に並んで歌う姿に「こんな風にいかにもな演出もちゃんと参加するのね」と謎の感心をしたり、とはいえやっぱり他のアーティストに比べると後ろ向いたり横向いたり自由に歌ってるなーと思ったり、何より本当に楽しそうなチバの姿にこちらまでほっこりしたり……いろいろ盛りだくさんだったのだが、そんなこと『カナリヤ鳴く空』の前では些末なことである。

 

帰り道、抱えきれない興奮をただただTwitterにぶつけ続けた。こういう時に「ボッチはキツイな」と痛感する。この日ばかりはあの高揚感を誰かと共有したかった。帰り道でThe Birthdayファンと思われる人を見かけるたびに「ヤバかったですね!」と声を掛けたくなった。別に感想を語り合いたいとかそういうことではない。ただただ「ヤバいものを目にした」という事実を確かめ合いたかった。そして「あぁ、あの瞬間のあの状態を『発狂』と表現するのかもしれない」とじんわり考えたりした。きっとあそこまで全身が興奮に支配された経験は初めてだった。あの瞬間、間違いなくわたしは『発狂』していたのだな、と。

 

 

これがあの夜の出来事だ。

ライブからほぼ1ヶ月が経過してしまったが、初めての不思議な体験を文章として残しておくべきだよな!と勢いだけで書き上げた。というのも、明日(12月1日)あの夜のライブがスペースシャワーTVで放映されるのだ。映像として観てしまう前にじぶんの感覚だけを頼りにあの光景を残しておきたかった。やはり、映像として改めて観てしまうと記憶が上塗りされてしまうので。もしかしたら間違って記憶していることもあるかもしれません。それでもじぶんの視界が捉えた光景を文章にできて良かった。

 

ここ最近サボり気味だったブログですが、来年もマイペースに続けていきます。この記事が今年最後のエントリーになるだろうか。うーん、どうかなぁ……。

 

おわり。

ご覧いただき、ありがとうございました。

 

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