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BUMP OF CHICKEN『aurora arc』全14曲感想

aurora arc (初回限定盤B)(CD+BD)

BUMP OF CHICKENの9枚目のアルバム『aurora arc』が2019年7月10日にリリースされた。全14曲のうち12曲が何かしらの形で解禁されていて、アルバムとしてはやや寂しい気もしなくもないが実際に全14曲をとおして聴いてみたら「この並びで聴くからこそ!!!!」と驚きやら感動やらでいっぱいになった。やっぱりアルバムで聴くからこその醍醐味ってまだまだあるんだ。あとアルバムのアートワークにけっこう感動してしまい、そういった面でもフィジカルの強みを多いに感じた。

ということでさっそく始めます。

 

 

1. aurora arc

ギターのアルペジオからはじまるインスト曲。少し切ない曲調なのに最後に同じフレーズを繰り返す部分で妙な力強さを感じる。アルバムの世界にリスナーを引き込むような役割なのかな……。スーッと馴染むような優しさと力強さをあわせ持った一曲。

 


2. 月虹

アニメ『からくりサーカス』に提供された既発曲。とはいえ実は一度も聴いていなかった。アニメは観ていなかったし、なんだか聴くタイミングを逃しているうちに「いずれ何かしらの形態でリリースされるよな」と思い、そこからは敢えて聴かないようにしていた感もある。

これイントロから驚いた。何だろう……「こんな感じの曲かなぁ」とか想像していたわけでもないけど「そうきたか!!!」と衝撃が大きかった。アイリッシュ音楽?というのでしょうか、このイントロは。『車輪の唄』っぽさを感じてしまったのはジャンジャカ鳴るアコギの影響か。〈耳と目が〜〉からの曲の展開がすごくドラマチックで好きです。あとやっぱり藤原基央のハイトーンボイスは最高。

 


3. Aurora

『Aurora』、めちゃくちゃ大好きです。聴けば聴くほど大好きになる。

もうほんとにね、歌詞がね……。「これぞ藤原基央!!!!」というキラーフレーズのオンパレードでちょっとでも油断したら軽率に泣く。わたしは、藤原基央のどんな立場のリスナーにも寄り添ってくれるような類の詞の世界観が本当に本当に大好きだ。彼は「一見すると弱者と分類される人(もちろん自覚的にそう思っている人を含む)」を肯定する歌詞を本当にたくさん書いていて、そんな歌詞に何度も何度も救われているのがわたしだ。

『Aurora』の〈考え過ぎじゃないよ そういう闇の中にいて 勇気の眼差しで 次の足場を探してるだけ〉もそのひとつに数えられるだろう。まじでなんでこんなに分かってくれるんだ!!!!と新宿駅湘南新宿ラインの下り線ホームで泣きそうになりました。けっきょく人間の勇気なんてものは誰かと比べることはできないんだよなー、という至極真っ当なことを気づかせてくれるのが彼の書く歌詞の素晴らしさだ。頭では分かっているつもりでも、それを意識して他者を思うことはとても難しい。藤原基央という人は、そういった「はかることのできない勇気」というものの存在をとても大切にし、認めることができる人なのだと思う。

あと非常にオタク的な視点になってしまうけど大サビの〈ああ、なぜ、どうして、と繰り返して〉部分の引きつったような声の出し方が最高に好きです。

 


4. 記念撮影

一昨年から去年まで開催されていたPATHFINDERツアーで何度も聴いた曲。なので、CDとして聴いているときでも脳内にはライブの光景が広がっている。

この曲は歌詞の解釈に於いてリスナーに委ねられている比重がとても大きいように思う。特に〈想像じゃない未来〉という部分。この部分をどう解釈するかによって、楽曲の持つ世界観の広がり方がずいぶん違ってくる。そして最後には結局、やっぱり藤原基央ってすごいなーと思ってしまうのです。件の部分の個人的解釈については敢えて書かないけれど、皆さんはどう解釈しますか……?

 


5. ジャングルジム

インスト曲である『aurora arc』と同様に完全新曲。『月虹』に続き「そうきたか!!!」第二弾。まさかこんなにシンプルなアレンジの曲だったとは……。

そしてとんでもなく優しさに満ちた歌詞である。なんてこった。名前がつけられないような感情を名前をつけないまま多くの人の心に響く形で楽曲へと昇華させる技術がマジでとんでもねぇですね本当に。『ジャングルジム』を聴いたとき何故か『透明飛行船』を思い出してしまったのだけど、それはきっと《鉄製の遊具》つながりだからだろうか。

 


6. リボン

『ジャングルジム』から『リボン』の流れを聴けただけで「このアルバム買って良かった!!!!!」と思えたわたしは幸せだ。アルバムリリース決定の一報を知ったときは収録曲のほとんどが既発曲でぶっちゃけ少しガッカリしたりもしたけど、それは大きな間違いだった。この『ジャングルジム』→『リボン』の流れで聴いたときの『リボン』という楽曲の持つパワーといったら凄まじかった。マジで本当に自分でもびっくりするぐらい泣いた。すごい、すごい曲だよ『リボン』。『ジャングルジム』の弾き語りの余韻に浸っていたところに『リボン』のイントロのアルペジオ。めちゃくちゃ美しいつながりだ。あまりのインパクトに「これぞアルバムで聴くことの意義だ!!!!」と楽曲そのものとは別角度でも感動した。

ギターとボーカルのシンプルな構成から、ドラムが入り、ベースが入り……という流れが、まるでBUMP OF CHICKENというバンドが生まれる過程を物語っているようで、楽曲に物語性を求めてしまう系のオタクであるわたしはエンエン泣いてしまいました。

 


7. シリウス

スピード感溢れる構成、とても好き。サビ前に入るギターフレーズがめちゃくちゃカッコいい。アップテンポナンバー仲間の『Hello,world!』と立て続けに演奏されたらめちゃくちゃブチ上がるだろうなー。聴きたい。

 


8. アリア

この曲もライブ(BFLYツアー日産スタジアム公演)で聴いたときの印象が強烈に残っているので、どうしたってその時の思い出とリンクしてしまう。それにしても〈僕らの間にはさよならが出会ったときから育っていた〉という歌詞はあまりにも悲し過ぎるな……。

 


9. 話がしたいよ

「君」への想いがあまりにも切ない。貰ったお薬を飲まない感じも、「どうでもいい」と言いながらも言い過ぎたと改めるところも、人間のままならない感じをとてもリアルに描き出していて、本当にこういう細かな描写まで抜かりがないぜ……!と感服する。「君」といた時間への心残りがありながらも、それでも区切りをつけて前に進もうとする様子が、余韻を残さない楽曲のアレンジ面でも表現されているなーと思ったりする。

 


10. アンサー

何度目だよって感じだけど、この曲も最近になって繰り返し聴くようになった。正確にいえばPATHFINDERツアーのライブ盤CD(映像作品『BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER SAITAMA SUPER ARENA』に特典として付属)を聴いているうちに大好きになった。サビ部分のメロディがとても心地よい。大サビ前の間奏部分もめちゃくちゃ気持ちいい。とにかくズンズン前進したくなる気持ちになる個人的超ポジティヴソング。ちなみに先述のライブ盤CDでは歌詞を間違える貴重な音源を聴くことができます。

 


11. 望遠のマーチ

昨年末のCDJ18/19でひと足お先にライブで聴いてきた。この曲はライブでこそ活きる曲だ。サビ部分の〈いこうよ〉では会場全体がシンガロングするし、一体感が凄まじかった。歌詞同様とてもポジティヴなパワーを感じた。終始バックで流れ続けるギターリフがとても好きです。それはそうと〈夜を凌げば太陽は昇るよ そうしたら必ず夜になるけど〉という歌詞があまりにも藤原基央で感動した。『HAPPY』で歌われている〈悲しみは消えるというなら 喜びだってそういうものだろう〉という世界観に通じる物があるよなー、と思うのはわたしだけだろうか。

 


12. Spica

この曲で歌われている対象者を「誰」に想定するかでだいぶ解釈変わってくるぞー、と個人的にザワザワした一曲。しかし都合の良い方に解釈するタイプのわたしは、その対象者を我々リスナーに設定しました。未だかつてこんなにもリスナーへの信頼をストレートに歌ってくれたBUMP楽曲があっただろうか……。手をとった相手ではなく「ふたり」の繋ぎ目が世界の真ん中になったと言い切るところにこそ、藤原基央のアーティスト活動、ひいてはBUMP OF CHICKENというバンドの音楽活動の基本姿勢が示されているように感じる。彼らはしきりに《音楽は聴いてもらうことで完成する》というような発言をしており、まさに、それこそ自分と相手との関係性こそ彼らの楽曲の理想とする在り処なのだ。だからこそ「僕」でも「君」でもなく「ふたり」の繋ぎ目こそを世界の真ん中と捉えたのだろう。あぁブレないその姿勢最高。わたしは、この曲を、決してラブソングだなんて言わないよ……。

 


13. 新世界

これは間違いなくラブソングですね!!!!!しかしその対象は恋人でも子どもでも親でも友人でもペットでも植物でも芸術でも……なんでもOK、とにかく自分が愛する誰かや何かに対してどストレートに〈ベイビーアイラブユーだぜ〉と声高らかに伝えることの素晴らしさよ……。

すでにこの印象的なフレーズを含む何小節かはロッテのCMで聴いていたが、フルで聴いたのは初めてだった。なのでド頭に〈君と会った時 僕の今日までが意味を貰ったよ〉と歌われた瞬間に、体中に喜びが満ちるのを感じた。それくらいに最高の歌い出し。「まさにそれだよ!!!!」とヒザを打った。他でもない藤原基央がそう歌ってくれる説得力よ!!!!!最高だぜ!!!!とにかくこんなにも肯定的な楽曲を歌うBUMPが新鮮過ぎてなんかもう感動とか驚きとか、とにかくさまざまな思いがグワーっと体中を駆け巡った。

かわいらしいメロディと超ポジティヴな歌詞、まじでBUMP史上最強の全肯定ソングだだ。個人的には〈いつの日か 抜け殻になったら 待ち合わせしようよ〉という歌詞が最高にロマンチックで好きです。あーーーマジ最高。(ロッテのCMを見直してみたら、冒頭の〈君と会った時〜〉部分もバッチリ収録されていてたまげた。CMで見たときに何故引っかからなかったのだろう……)

 


14. 流れ星の正体

遥か昔に藤原基央による弾き語り音源がオフィシャルサイトで期間限定公開され、ようやくフルで聴くことができた。この楽曲は、彼が『B-PASS』という雑誌で連載していたコーナー『fujiki』が連載終了することに際し生まれた詞をもとに制作された、という背景を持っている。そのため1番部分は完全にfujiki読者に向けてあてた内容になっている。そして2番になると、その対象はBUMPリスナーへと広がりを見せる。当時、雑誌上でfujiki最終回に寄せて書かれた藤原直筆の歌詞を読んだ者(わたしだ)は1番の歌詞で涙を流し、2番を聴いて嗚咽しただろう。もうなんか愛がすごい。リスナーへの愛がすごい。リスナーに届けようという意識がすごい。それがダイレクトにビシバシ伝わってくる。あまりにもダイレクト過ぎて「エーン」と泣きたくなってくる。〈間に合うように〉とか〈気づいてほしい〉とか決して押し付けがましくない、それでもそっと寄り添って肯定してくれるBUMP楽曲の世界観が表れまくっているワードチョイス最高。

最初からずーっとアコギ1本での弾き語り形式をとっているのに、最後の〈君が未来に零す涙が 地球に吸い込まれて消える前に〉から急にバンドアレンジになっているのも、あまりにも出来すぎている。1番から続く藤原基央の比較的パーソナルな想いが、サウンドの転換とともに見事にバンド全体への意思へと変化するのだ。見事すぎるだろ!!!?そんでもって最後の最後に〈お互いに あの頃と違っていても 必ず探し出せる 僕らには関係ない事 飛んでいけ 君の空まで 生まれた全ての力で輝け〉と力強く歌い上げる。20年以上のキャリアを持つバンドだからこその説得力だ。お見事過ぎる。アルバムの最後にこの歌詞を持ってくるなんて……BUMP最高、のひと言に尽きる。

 

 

以上がアルバム全14曲の感想です。

何度も繰り返し聴いたはずの既発曲も、アルバムを通して聴くことで今までと違った印象を受けたり、楽曲の持つ世界観がより強烈に感じられたり、改めて『アルバム』という形態で聴くことの面白さを実感した。それが何よりも収穫だと思う。

 

 

 

余談。

今回のアルバム、実はアートワークにもめちゃくちゃ感動したので、書いておきます。

これ、すごくない?アルバムそれぞれが異なる色をしていて、重ねるとまるでオーロラのような色の変化を楽しめるという試み。マクロの中のミクロを意識させるアートワークに、BUMPのライブ演出でも定番となりつつある光の演出と通じるものを感じた。

ここ数年、BUMPのライブでは光るリストバンドが観客に配られ、随所でそれらの光を使った演出が見受けられる。彼らは事あるごとに、それらの光がリスナーひとりひとりを意識させるアイテムになっている、といった趣旨のことを語っている。つまり、会場全体で観てしまえば『光の演出』というひと言で言い表せてしまえる現象も、その先にはそれぞれのリスナーがいる、ということだ。同じように、店頭に重ねられたCDアルバムの束にも、その先にそれぞれのリスナーがいる。アルバムの色を変えることで、その「ひとりひとり」をより浮き彫りにしたのかなー、なんて思ったりしたのです。

 

こういった音源とは別のフィールドでの表現ができるのもフィジカルの強みだ。あと、単純に自分の好きなアーティストの作品がCDショップにデカデカと展開されている光景ってやっぱり嬉しいんだよなぁ……。

 

というわけでいよいよ今週末からツアーが始まります。いまいち実感がわかなかったけどCDを手にした瞬間、急にドドドッと実感が湧いて吐きそうになったのは言うまでもありません。ツアーやライブが始まることを実感したときの、あの緊張感は何なのでしょうか。当事者でも何でもないのにめちゃくちゃ緊張してしまうんだよなー。いつまで経っても慣れないものです。

 

 

おわり。

 

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