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『めちゃイケ』最終回を終えて思うこと

めちゃイケ最終回集合写真


『めちゃ2イケてるッ!』最終回が放送されて1週間が経った。

中学生の頃から続けてきためちゃイケの毎週録画を解除し忘れていたことに、さっき気付いた。HDDレコーダーの録画ランプが点灯していて「何予約してたっけ?」と確認したら19時から放送している『ENGEIグランドスラム』を録っていた。しかもMCはナインティナイン。なんてセンチメンタルな展開……。こんなことで終わったことを思い知らされることになるとは。

 

最終回は5時間10分の超スペシャル版での放送だった。放送時間を知ったときは「いくらなんでも長すぎないか?またネットで叩かれやしないか?」とやや心配していたのだが杞憂に過ぎなかった。放送中はtwitterでもトレンド上位を維持しつつけ、世間での評判も上々だったようだ。5時間以上に及んだ放送も、中身を見ればコーナー物を連発する構成になっており、どのタイミングでも見やすかったように思う。また往年の人気コーナーをバンバン復活させたことも「最終回くらいは見るか」と感傷に浸りたがった層には、ぴたっとハマったのだろう。今まで散々叩かれてきたネタを「最終回だからやってしまえ」精神で解禁したことも高評価の要因だったようだ。まぁこれはある程度予想していた展開だったのだけど、こんなにもダイレクトに視聴者に対して「怖いものなんてないんですよ、何せ最終回なので」ということをアピールしてくるとは思わなかった。スタッフや出演者の意地を見た気がする。

 

それにしても、テレビではどちらかというと優等生な面しか見せてこなかった(とわたしは思っている)岡村隆史があんなにもあからさまに世間を皮肉るとは…痛快だった。彼は今までも青少年の犯罪やイジメ問題等をバラエティ番組の影響だとするBPOやら世間に怒りをぶつけ続けてきた。しかしそれらの主張はあくまでラジオ番組で話されるにとどまり、あんなにも直接的にテレビでこの手の発言をしたことは珍しいのではないだろうか。今でこそご意見番(笑)的ポジションになったりもしているけど、そもそも岡村隆史という人は世間では優等生的お笑い芸人という立ち位置にいた人だ。芸人らしくないマジメさや努力家な面が人々から好感を得ていた。だから彼が長期休養し、相方の矢部浩之が代役として旅猿に出演した際、東野幸治が放った「岡村隆史ってすごいでしょ、国民の弟みたいなもんやん」という一言に、当時のわたしは強く同意した。彼はめちゃイケに於いては優等生な面しか見せてこなかった。世間への不満やボヤキ、いわゆる厄介な面はラジオでしか見せてこなかった。それはある種、めちゃイケの視聴者が求めている岡村隆史像を演じていたように思う。しかし最終回での彼は違った。

 

でも良かったんじゃないでござるか。このコーナーがなくなったことで世の中からイジメがなくなったんでござるから

(他メンバーから「なくなったかな?」の声)

一切、イジメがなくなったんでござるよ!

 

 

岡村隆史は、自身のラジオで常々言っていた。「我々が叩かれたりぶたれたりする様子を見ていじめられている子が笑ってくれればいい。 我々お笑い芸人は『マジメにふざける職業』なんです」と。わたしは彼のその考えが本当に好きで、だからこそ青少年や学校が抱える様々な問題や事件をバラエティ番組と安易に関連付ける一部の視聴者が大嫌いだ。そして、そういう奴に限って普段は番組を見ていないくせにちょっとした取っ掛かりを見つけるとここぞとばかりに叩いてくるからタチが悪い。子どもが真似したらどうするんだとか言っている保護者の方々には「バカか」と言ってやりたい。わたしは子どもの頃からめちゃイケを見続けてきたけど、それなりにまともに育っているよ。バラエティ番組に影響されて問題起こすような人間は、遅かれ早かれ問題を起こしているだろう。それをバラエティ番組のせいにするだなんて浅はかだ。「子育てサボるなこのバカ親が」と言ってやりたくなる。

だからこそ、あの岡村隆史が『しりとり侍』冒頭で放った皮肉が堪らなかった。いいぞいいぞもっと言ってやれ!と思った。めちゃイケで受けた傷に、めちゃイケで片を付ける。それが叶ったようで何だか胸がアツくなった。

番組の最後。岡村隆史の妄想結婚式という設定のもと、各出演者が最終回への想いをお祝いスピーチという形で披露した。この場でたんぽぽの白鳥久美子が、自身が学生時代に受けたイジメに絡め「ここにめちゃイケに救われた人間がいます」と語ったシーンには、めちゃイケが今まで受けてきた様々な傷が報われた気がした。

 

 

このお祝いスピーチには、各出演者のそれぞれの想いが溢れていた。最終回だからこそ口にできた想いも多かっただろう。中でも、光浦靖子のスピーチが素晴らしかった。以下がそのスピーチ全文書き起こしです。

 

隆史さん、隆子さんご結婚おめでとうございます。えーっとぉ、隆史さんと出会いましたのはかれこれ25年前……

 

ーここから片岡飛鳥氏によるインタビュー映像

光浦:うーんと、とぶくすりの頃から劣等感が、いちばん…

片岡:お笑い劣等感?

光浦:そうですそうです、一番ダメな子だったんで

片岡:今、自分がもうスベらない状態になってるかとか思うことない?

光浦:うん。あの、ある程度…60点くらいの回答は…

片岡:いろんな職場のディレクターが貴方いたら絶対頼りにするよなっていう演者になってるよね

光浦:オファーがない……

片岡:オファーがない?

光浦:オファー全然ないです

片岡:「さんま御殿」の(オファーも?)

光浦:「さんま御殿」も飛鳥さんに褒められて以来、一回も呼ばれてないです

(光浦・片岡 笑う)

片岡:すげー面白いと思ってメールしたのに

光浦:あれ、、、選球眼…ははははははっ

ーインタビュー映像おわりー

 

(涙目でスピーチ続き)そんなことも乗り越えるくらい長い時間が経ったので、もう自分にコンプレックスもないし、えー、わたしよりこの人が笑いを取ってる、この人の方が前に出てるとかそんなことも一切思わないとこに行きまして、普通にホントに、あのぉメンバーのことが全員好きなんですね、わたし今。でも、そういう時に、あのー、いかんですね、終わるんですね。で、わたしの中のジンクスで、バレンタインデーの時にみんなにチョコ配りながら、その年に一番素敵だった感謝する人に、わたしテディベアを作って渡してたんですね。で、毎年いろんな男子メンバーにあげてて、わたしのクマを5つ集めたらわたしはその人と結婚しようと思って。誰が5つ早く集めるのかなって俯瞰で見てたら、ある日みんなが前室で「クマ4個貯まったら死ぬで」って言ってて…。なんかねぇ、わたしもうショックがデカ過ぎて「なんて素敵な発想する仲間たちだ」と思っちゃった。だからもうその辺りから狂いだしてるんですよ、わたしの感覚も。

 

彼女のこのスピーチを聞いて、 飛鳥さんがメンバーの出演番組をチェックし、メールを送っていたという事実にただただ驚いた。やっぱり彼らめちゃイケメンバーにとっての片岡飛鳥という人は大きな存在なのだ。それこそ加藤浩次が語っていた「飛鳥さんに加藤頼むって言われたら『はい』しかないです、僕」という言葉に集約されているように。彼らにとって、片岡飛鳥という人はバラエティ番組に於いての『正解』そのものなのだろう。

また、光浦は、かつてのコンプレックスや劣等感みたいなものが一切なくなったとも話している。何というか、この言葉の持っている意味は非常に大きい。「めちゃイケ」という番組はそもそもナインティナインが、もっと言えば岡村隆史が絶対的なエースだった。岡村隆史めちゃイケの主役であり、売れっ子のナインティナインとそんなナイナイを羨むその他の芸人といった構図が番組の大きな要素となっていた。だからこそ岡村隆史は優等生でいなければならなかったし、極楽とんぼはヒール役に徹し、そんな極楽とんぼの山本と本気で喧嘩する光浦靖子の構図が生まれたりしていた。演者同士の本気のいがみ合いもネタにするぐらい仲が悪かったりもした。また、それとは逆によゐこ濱口優鈴木紗理奈が余りにも親密だったため、交際を疑った岡村や加藤が収録終わりの彼らを尾行したといったエピソードが披露され、検証企画が行われたりもした。今でこそめちゃイケファミリーと呼ばれ和気あいあいとした雰囲気のメンバーだが、かつてはもっとトゲトゲしていた。ネタなのかマジなのか分からないような緊張感が。しかし22年が経過し、彼らも歳を重ねた。それぞれが経験を積んで、それぞれがそこそこのクラスの芸能人だ。光浦が言うように互いへの劣等感みたいなものを抱えているような関係性ではなくなってしまっているだろう。だから、きっと、かつてのような設定のコントを今のメンバーで演ったとしても面白くなるかどうかは分からない。いや、きっと難しい。だって彼らがどんな関係性なのか、少なくとも毎週めちゃイケを見てきためちゃイケ大好きなわたしはその変化を知っている。家庭を持っている人も、大きなレギュラー番組を持っている人も、芸人とは異なるフィールドに活躍の場を見出している人もいる。ナインティナイン一強状態だった昔の構図には戻れない。

もちろん時代の流れもあるし、世間の冷たい声に晒され続けたこともあるけれど、バラエティ番組が放送開始当初のメンバーのままで長く続けていくというのは本当に難しいことなのだと思う。だって演者の成長とともに当初のコンセプトは嫌でも変えていかなければならないんだもの。特に、めちゃイケのような若手芸人独特の関係性やパーソナルな部分をさらけ出して笑いに昇華させてきたタイプの番組であればあるほど、彼ら出演者の立場の変化が番組に与える影響は非常に大きいだろう。開始当初は分かりやすかったメンバーの立ち位置も、22年も経てば変えざるを得ない。そのギャップを埋めつつ、視聴者が望む「面白さ」を提供し続けるなんてめちゃめちゃ難しくない?冷静に考えて無理だよな、って思う。光浦靖子のスピーチを聞いて、そんなことを考えた。

 

だからもう本当に、こんなこと言ってしまいたくないけど、本当に本当に言いたくないけど、めちゃイケが最終回を迎えるという事態になったことは仕方ない。仕方ないというか、これを回避するのは途轍もなく難しい。だって22年だよ。番組が始まって22年も経ったのだ。単純に考えて20代だった岡村隆史が50歳手前のおっさんになってしまったのだ。それだけでも番組にとっては大打撃だ。ご存知の通り、岡村隆史という芸人はその身体能力の高さを活かした芸で多くの笑いを生み出してきたタイプの芸人だ。そしてめちゃイケは彼のそういった面に頼った企画で数々のヒットを飛ばしてきた。そんな彼ももうおっさんだ。かつてのようなキレッキレな動きは難しい。『岡村隆史のオファーシリーズ』を通して、そんな彼の老いを目の当たりにするのはファンとしてはしんどい。加藤浩次が爆裂お父さんでジャイアントスイングを繰り出すとき「加藤さん、しんどそうだ…腰とか大丈夫なのか」とか心配しながら見るのもしんどい。キレッキレだった彼らの面白さに慣れてしまっている身としては、彼らの老いを考慮しつつ笑うというのは、何ていうかツライ。そして、そんな風に番組を見てしまうのは彼らにとって失礼かもしれない、とか余計なことを色々考えてしまうこともツライ。

加藤浩次は最終回を迎えて「悔しい」と語っていた。「もっと歳をとったらダメなおっさん達がもっと面白くなるんじゃないか」とも言っていた。すごくよく分かる。このままめちゃイケが続けば老いていく過程を笑えるようになる日も来るかもしれない。でも、きっとそうなるまでの数年間は「彼らの老い」に慣れないまま、停滞期みたいなものを過ごさなくてはいけない。それを考えると、22年という年月の流れはある種の足枷のようにも感じてしまう。若々しかった彼らが老いていく様子に、わたしは、まだ順応できずにいる。いつでもあの頃を求めてしまい、そのギャップにちょっとだけ切なくなってしまったりする。そして、そんな風にめちゃイケを見てしまっている自分にガッカリもする。

最終回を迎えてしまったことは仕方ない。一応、わたしの中ではそういう結論に至った。至ったというか、無理やり自分の中で決着をつけた。本当は全然納得していない。

 

「あなたにとってのめちゃイケとは何ですか?」という問いかけに光浦靖子は『宗教』と答えた。めちゃめちゃ分かる。わたしにとってもめちゃイケはある種の宗教だった。だってわたしの中の『面白い』の基準はめちゃイケだ。全ての面白さはめちゃイケを基準に図られ、めちゃイケこそが王道であり、いつでもめちゃイケは正しさの象徴だ。多感な時期に、最もよく見ていたテレビ番組がめちゃイケだったので、ただの『いちバラエティ番組』では終われないほどの影響をわたしの人生に与えている。無条件に正義なのだ。どんなに番組が批判されていても、わたしは常にめちゃイケ側の立場であろうとした。とてもヘンテコなことを言っている自覚はあるのだが、なぜかわたしはめちゃイケ側の立場であろうとしたし、どんな時も全力でめちゃイケを擁護してきた。

 

だから、最後のスピーチで岡村隆史が号泣しながら「めちゃイケは僕の青春でした」と言ってくれたことが本当に嬉しかった。分かってはいたことだが、わたしがこんなに大好きな番組が岡村隆史にとっても大きな存在であったことが堪らなく嬉しかった。最終回であんな風にグシャグシャに泣いてくれたことが嬉しかったし悲しかった。

最終回が終わって、多くの出演者が番組への想いをSNSに投稿する中、岡村隆史は自身のInstargamでこの件に関して一切触れていない(2018年4月8日現在)。そんなところも非常に岡村隆史っぽい。 

 

『めちゃ2イケてるッ!』は終わってしまった。でも、またいつか何かの企画で復活してくれるような気もする。あれだけ数々の人気企画を生んできた番組だ。特番復活も十分に期待できる。濱口優も「またやりましょうよ」と言っていたし。

最終回のエンディングで流れていたBGM、サザンオールスターズの『みんなのうた』にはこんな一節がある。

 

いつの日か この場所で

逢えるなら やり直そう

 

その日はきっとやってくると信じています。 

 

 

そうそう、最終回で流れていたBGMと言えばスピーチの際の選曲はなかなかニクイ演出だった。加藤浩次のスピーチでは彼が大好きなバンド・エレファントカシマシの『今宵の月のように』を流し、岡村隆史のスピーチでは竹内まりやの『人生の扉』を流していた。岡村隆史が涙で言葉が詰まってしまった瞬間に「信じられない速さで時が過ぎ去ると知ってしまったら どんな小さなことも覚えていたいと心が言ったよ」部分を持ってくるあたり全力で泣かせに来ていて、案の定、号泣してしまった。めちゃイケ大好きな人間(わたしだ)は、岡村隆史の涙にはとことん弱いんだよ……

 

 

改めて『めちゃ2イケてるッ!』22年間ありがとうございました。バラエティ番組の最終回の正解なんて分からないけど、あの5時間10分、日本中がめちゃイケで盛り上がっている様子は、めちゃイケファンにとっては堪らなくうれしかったです。久しぶりにめちゃイケを見た多くの人が「めちゃイケ面白い」ってツイートをしていて、何故だかわたしが誇らしかったです。こんな気持ちになれるテレビ番組は、おそらくめちゃイケ以外にありません。本当に本当に面白い土曜8時をありがとうございました。そしてお疲れ様でした。

 

最終回の収録テープも多くがカットされたんだろう。通常のスペシャルであれば後日こぼれ話が放送されるのだが、今回ばかりはそれもない。きっとカットされたシーンにも面白いシーンがたくさんあっただろうに…。ちくしょう、やっぱり納得できないや。

 

おわり。

ご覧いただき、ありがとうございました。

 

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