楽しいことがあり過ぎる

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【今週のお題】まぁ聞いてくれ、「少年時代」というエモい邦画があってだな。

今週のお題「夏の《映画・ドラマ・アニメ》」。まずは映画について書こうと思います。

 
夏になると必ずと言っていいほどラジオから流れてくる音楽がありますよね。そう、井上陽水の「少年時代」です。聴く者を郷愁の沼にドボンさせる非常にエモい曲としてあまりにも有名です。では同名の邦画があることをご存知の方は、どれくらいいるでしょうか。恥ずかしながら私は全く知りませんでした!!!

ということで、今回は映画「少年時代」について書いてみようと思います。

 

 

少年時代 [DVD]

 

「少年時代」という作品を初めて見たのは確か高校生の時だったと思います。夏休み、自宅にいたのは兄と私の2人だけ。暇を持て余していた私たちは家にあったビデオ(当時はまだDVDという文化が入ってきていない我が家)を片っ端から観ることに。その中の1本に誰が録ったか分からない「少年時代」という映画が録画してありました。

 

あらすじはこちら。

 昭和19年の秋、東京に住む小学5年生の進二(藤田哲也)は戦局の悪化に伴い、富山県の田舎に縁故疎開することに。そこで彼は子どもたちのリーダー格である武(堀岡裕二)と親しくなるが、彼は学校では性格が変わったように進二につらくあたるのだった…。

Amazonレビューより

 

「戦時中を描いた映画かぁ……」と思ったそこのあなた!!まぁ、聞いてください。この作品、ほんっっっっとうに素晴らしいんですよ!!!?

 ​


主人公である進二が、富山にある父方の叔父宅に疎開をし、大原くんと出会うことから物語は始まります。まずはじめに注目なのが進二と大原くんの対照的な人物像です。進二はヒョロヒョロでいかにも都会から来た少年って感じです。比較的良い家柄の出身である彼は、田舎では珍しい学生帽を被り、ハイソックスを履き、汗をかけばハンカチで拭い、おまけにきっちりとした靴を履いています。それに対して大原くんはいかにもガキ大将といった風貌。ガッチリとした体格であまり清潔ではない服装、足元は裸足+草履です。さらにケンカも強く勉強もまずまずといった感じ。家に帰れば幼い弟を背負い、家事を手伝います。クラスの男子を束ね、級長も務めています。まさにテンプレ通りの「都会っ子」と「ド田舎のガキ大将」という構図。分かりやすい!!!!

 

 ※レビュー内では「武」と紹介されていますが、主人公である進二は彼を「大原くん」と呼んでいるので本エントリー内での呼称は「大原くん」とします。

 


で、その大原くん。都会から来た進二に好意的に接してくれます。進二が東京から持ってきた宝物「戦艦むつのバックル」や本に興味を持ったことをきっかけに、進二のもとをちょくちょく訪ね、一緒に過ごすようになります。そうして大原くんが自分と全く正反対のタイプであろう進二に心を許し始めた矢先、ちょっとした事件が発生します。いつものように叔父宅で楽しく過ごしていた2人のもとに進二の叔母がやってきて、進二と同じように大阪から疎開してきた少女を彼に紹介したいというのです。このやりとりを聞いていた大原くん。思春期特有の微妙な感情が働き、あんまりおもしろくありません。この出来事がきっかけとなり、進二は徐々にクラス内で仲間外れにされ始めます。もちろん黒幕は大原くん。舎弟を使い、あの手この手で進二をハブにしていくのです。しかし、この進二という少年はなかなかに鈍感というか何というか。大原くん達(大原軍団)からの意地悪が、彼にはあんまり響かないんですよね…この進二の打たれ強さは何なんでしょう。きっと彼は、今までの人生で他人の悪意にあまり触れてこなかったんだと思います。だからこそ、大原軍団の意地悪に対してもあまり絶望していなかったんだと思います。それに対して大原くんはとっても繊細に描かれています。普段は威張りくさっているのに、進二と2人になると普通にコミュニケーションを図ってきたり…進二にとっての1番の友達の座を守りたい感が溢れまくっています。
意地悪に耐える日々の進二でしたが、ちょっとしたことがきっかけでその意地悪がなくなります。進二への意地悪をやめた大原軍団は彼に対し「今までお前が読んできた本の物語を話して聞かせろ」と注文をつけるのです。こうして進二は大原軍団の語り部として重宝される存在に…

 

 

季節は巡り冬のある日。進二は、母からの荷物を受け取りに隣町まで1人で出掛けて行きます。同じ日に、進二の疎開先宅を訪ねた大原くん。叔母から進二が留守にしている旨を知らされます。ここで大原くんのガキ大将センサーが働きます!たった1人で出掛けた進二の身を案じ、無謀にも雪が積もる街中へチャリンコをぶっ放して進二を追うため出掛けて行くのです。※ちなみに進二の交通手段はバス

 

無事に荷物を受け取った進二は帰り道で案の定、地元の不良共に囲まれます。ドンマイ、進二………もう完全に囲まれた、殴られる!といった危機的状況で、大原くんが助けに入ります。さすがだぜ、大原くん!!!必死で逃げた2人は無事に難を逃れます。そしてその途中、街の写真館で2人一緒に記念写真を撮ってもらうのです。ちなみに、この時に撮影した写真は、戦時下ということもありなかなか現像して貰えないことに…。

 

 

春になり、進二と大原くんのクラスに病気のため休学していた須藤くんが復学してきます。この須藤くんがなかなかの曲者。金持ちの須藤くんは体格こそヒョロっとして頼りない雰囲気なのですが、何しろ頭がキレるんですよねぇ…。クラスの権力を握っている大原くんの存在を疎ましく思っている須藤くんは、その頭脳を活かしクラスの男子たちを次々と取り込み、大原くんをハブる計画を企てます。もちろんその誘いは進二にも…。当初は大原くんハブ計画への誘いを断る進二でしたが、須藤くん+取り巻きの口車に乗せられ、まんまと須藤くんサイドに取り込まれてしまいました。さらに大原軍団だった舎弟達もあっと言う間に須藤くんサイドに寝返ります。ここら辺の描写が巧みで「あぁ、小学校時代とかって次から次へといじめられっ子のターゲットが変わったりしてたなぁ」ってちょっと苦い記憶が蘇ったりもしました。こうして須藤くん+取り巻きによりクラス内でリンチされる大原くん。大原軍団の面々にも裏切られ完全に孤立状態に。そんな大原くんの身を案じ進二は何とか彼への接触を試みますが、大原くんは「俺と話すな」といって進二から距離を置きます。いじらしい!!この大原くんが、本当にいじらしくて…!あーー、それでこそガキ大将!!!自分を庇ったら進二がどうなるか、ちゃーんと分かっているんですよ、彼は。そんでもって絶対に自分がいじめにあってることを口外しない!!!なんていじらしいんだ、大原くん……

 

こうして孤立しまくる大原くんと、ますます勢力を拡げる須藤くん。そういったクラスの状況を傍観することしかできない進二。彼らの状況は変わらないまま日々は過ぎ、間もなく日本は終戦を迎えます。

 

終戦を機に、疎開先から東京へと帰ることになった進二。大原くん孤立状態も解決しないまま、別れの日前日を迎えます。進二は大原くん宅(大原くんの家は決して裕福ではないので、ほったて小屋のような家)を訪ねますが、大原くんは姿を見せません。それでも進二は誰もいない室内に向け、明日の汽車で帰京する旨を叫び、父から貰った宝物である「戦艦むつのバックル」を置いて帰ります。

 

別れの日当日、駅のホームには進二を見送るために友人が集まり軍歌を歌い、別れを惜しんでくれます。が、そこに大原くんの姿はありません。この集まってくれた友人たちっていうのも、元 大原軍団の子ばかりなんですよね。須藤くんや須藤くんサイドの男子は1人も来ていません。これが、結構グッと来ました。進二との別れを惜しんでくれたのは、結局、一番最初に進二と仲良くなった元 大原軍団の面々ばかりなんですよ。

 

大原くんは姿を見せず、無情にも出発の時を迎えます。

 

走り出す汽車。ここで最高にエモい瞬間が!!!

乗客でごった返す車内を無理やり進んだ進二は、車窓から流れる富山の景色を眺めます。と、そこには汽車と併走する大原くんの姿が!!進二が全力疾走する大原くんの姿を捉えた瞬間、井上陽水の少年時代が。あの超有名なイントロが「ジャンジャン、ジャンジャン、ジャンジャン、ジャン♪」と流れ始めます。

あーーーー、ここで私のエモいメーターがMAXに!!!!

少年時代

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  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 

大声で「大原くーん」と叫び、被っていた帽子を思いっきり振る進二。それに気付いた大原くんは、汽車の間近まで来て「進二!」と叫びます。

2人がお互いの顔をしっかり見つめ合った所で、汽車は大原くんの目の前を通り過ぎてしまいます。そうして走り去る汽車を、大原くんは片手を挙げて見送るのでした。

 

やがてトンネルへと吸い込まれていく汽車。線路の上に直立し、片手を挙げ続ける大原くんがどんどん小さくなっていき、トンネルの暗闇に消えてしまうところでエンドロールとなります。少年時代然り、STAND BY ME然り、少年と線路の組み合わせってどうしようもないくらいノスタルジックな想いを掻き立てる組み合わせだよな。

 

で、ここから更に泣かせる演出が!!エンドロールの背景が!あの2人で撮った2ショット写真なんですよ!!!!あの写真が、本棚に飾られているんですよ!!!!

 はーーーーー、エモい!!!!!エモ過ぎるではないか……… 

 

このエンドロールを観るたびに「この写真が飾られている本棚ってどこの本棚なのかな…」って考えちゃうんですよね。現像された写真を進二や大原くんが受け取るシーンは本編には出てこないんですよ。つまり、この飾られた写真が進二の持ち物なのか、大原くんの持ち物なのかは我々には分からないんです。進二が帰京して自宅に飾ったものなのか、それとも進二が疎開していた叔父宅に残されたものなのか…もしかしたら大人になった大原くんの自宅に飾られているのかもしれない……考えればいくらでも想像できるんですよねぇ。

 

 

 

 

この映画の素晴らしいところは、あらゆるシーンをただ淡々と描いていることにあると思います。戦時下だし、疎開先だし、主人公が意地悪されたり、はたまたいじめる側になったり…ハードに描こうと思えばいくらでもハードになるシーンを全て淡々と描いているんですよ。それがとても良いんですよねぇ。本当にこういった出来事があの時代の日本にはあったんだろうなぁって素直に思えるというか。製作者側がどの登場人物にも肩入れしていない感じが絶妙なんですよ。だからあんなにもハードな時代を描いた映画なのに、後味が悪くない仕上がりになっているんだと思います。戦争映画だけど、そういった事とは別ベクトルで誰にでも身に覚えのある感覚を映し出しているというか。

 

そういえば、進二の母親が随所で「田舎の人達は素朴で良い人ばかりだ」とか「田舎は静かで何もなくて穏やかだ」みたいなことを言うんですけど、これってすごい皮肉だなーって思いました。息子が意地悪されたり、意地悪したり、割りと波乱万丈な経験を積んでるのに、そういったバックボーンを大人は一切関知していないんですよね。住んでる場所に関わらず、どんな人にも様々な出来事が日々起きているという事実を、いちいち汲み取ってあげるほどの余裕がないんだよなぁ。で、それに対して進二も特に反論するでもなく。そういった細かなやり取りさえも「あぁ、あるなぁ…分かるなぁ……」って思いました。大人が思っているほど子どもの世界って単純じゃないんですよね、きっと。自分だって、子どもの頃は良くも悪くも色々考えてたもんなぁ……

 

ついでに言うと、転校してきたばかりの進二がハイソックスを履き東京言葉を話していたのに、帰京前には裸足で訛り言葉を話すようになっていたのも「なんか良いなぁ…」って思いました。めちゃめちゃ細かなところまで演出が凝っていて…何度観ても何かしら感じられる作品だと思います。

 

 

とまぁ、ここまで長々書いてきました。情熱のままに書いたら思いのほか長文になってしまい、自分でも驚きです。

相変わらず思ったことを文章にするのが超絶ヘタクソなので、何が良いのかさっぱり分からん!と思った方も、「ほうほう、そんなに絶賛するならちょっと気になるぞ」って思った方も、とにかく多くの皆さんがこの作品をご覧くだされば嬉しいなぁ…と思います(もはやPR担当の気分)。感情を大きく揺さぶられる名作ですので。ほんと、これだけは間違いないので。

 

 

余談:このエントリーを書くにあたり、映画「少年時代」について色々と調べていたら衝撃の事実にブチ当たりました。なんとこの作品、第14回 日本アカデミー賞で最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞を受賞していました。マジかー、そりゃそうだよな。本当に素晴らしいもの。

 

よし、これで自信を持って推せるぞ。

皆さん、映画「少年時代」をご覧ください。

 

以上です!

ご覧いただき、ありがとうございました。

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